MFT(口腔筋機能療法)とはMFT
口腔筋機能療法(MFT)とは
当院では、口腔筋機能療法(MFT)や筋機能療法と呼ばれる、舌や口腔周囲筋のトレーニングを行っています。
歯並びや顎の骨の発育は、遺伝的な影響を受けますが、それとともに生活習慣などの非遺伝的な要因の影響も受けています。食べ物を噛む強さや、口呼吸の習慣、舌の位置といった生活習慣が、歯並びやかみ合わせを乱す可能性があるのです。
口腔筋機能療法(MFT)によって筋肉や呼吸、発音の訓練を行い、唇や舌を適切な位置に置くようにすることで、歯並びやかみ合わせがある程度まで改善する効果が期待できます。
また、矯正治療を受けている方に口腔筋機能療法(MFT)を受けていただくことで、歯並びの改善を促したり、矯正後の歯並びをキープしたりすることにもつながります。
口腔筋機能療法(MFT)が
必要な理由
肉食が中心の食生活で硬いものをよく食べるモンゴルの遊牧民は、高齢になっても歯並びがしっかりと維持されている傾向にあります。日ごろの食習慣や、どれだけものを噛むかなど、小さなことが歯並びやかみ合わせに大きな影響を与えます。
一方で、現代の日本人は柔らかいものを食べることが多く、どうしても噛む力や口周りの筋肉が衰えやすくなっています。だからこそ口周りの筋肉を鍛え、唇や舌の位置を整える口腔筋機能療法(MFT)によって、意識的にトレーニングを行うことが大切です。
特に子どもは身体が成長段階にあり、歯並びやかみ合わせ、顎の骨の発達が影響を受けやすい状態にあります。指しゃぶりなどが歯並びに影響を与えることもあるため、小さなころから適切な筋肉の動かし方や噛む回数を知っておくことで、適切な顎の骨や歯列の発達を促すことができます。
歯並びや
かみ合わせに
影響を与える生活習慣
歯並びやかみ合わせに悪影響を与える生活習慣には、以下のようなものがあります。
・口呼吸をする
・硬い食べ物を噛むのが苦手
・よく噛んで食べる習慣がない
・猫背など、姿勢が悪い
・舌の位置が下がっている
・お口が開いて舌が前に出ている(お口ぽかん)
・(子どもの場合)指しゃぶりをする
このような日常生活の舌の位置や噛む癖、呼吸のやり方や姿勢など、さまざまな方向から歯並び・かみ合わせにアプローチするのが口腔筋機能療法(MFT)です。
▶舌の位置の重要性
舌の位置は本来、上顎に付いている状態が正常です。ところが舌が上の歯や下の歯を後ろから押し出すように接していると、歯が前方に出る原因となります。
舌の位置を正常にするメリット
舌の位置を適切な位置に維持することで、以下のようなメリットが期待できます。
・歯並びがきれいになる
・上顎が成長する
・姿勢がよくなる
舌が適切な位置に配置されると、舌の力によって歯が動くことがなくなり、歯がアーチ状に近づきます。また、飲み込むときの舌の位置を改善することによって、上顎に圧力がかかるため、上顎の成長も促進されます。
なお、舌の位置は姿勢にも関係しています。舌が上顎に付いていると、顔が前方に突出しにくくなり、バランスの取れた適切な姿勢が保てるようになります。
▶呼吸の重要性
お口の健康や歯並びの観点からいうと、本来は鼻呼吸が適切な呼吸です。
しかし無意識のうちに口呼吸が習慣となっており、その影響でさまざまなお口周りのトラブルが起きている方が少なくありません。口腔筋機能療法(MFT)では、口呼吸を鼻呼吸に矯正するトレーニングも行います。
口呼吸のデメリット
- 口が乾燥してむし歯になりやすい
- 喉が乾燥して風邪やアトピー、喘息の原因になることも
- 中顔面が下方に成長し、クマができやすくなる
- 頭部が前方・下方に傾き、姿勢が悪くなる
- 呼吸が浅くなり、体力や集中力が低下する
- 上顎のアーチが狭くなり、歯並びやかみ合わせが悪くなる
- いびきや鼻詰まり、中耳炎、睡眠時無呼吸症候群が起きやすくなる
鼻呼吸のメリット
- 口内が乾燥しにくく、むし歯のリスクが低くなる
- 歯ぐきの腫れや口臭が起こりにくい
- 鼻の構造により、悪い菌が侵入しにくくなる
- 免疫力が上がり風邪を引きにくくなる
- 呼吸が深くなり、酸素が身体に行き渡りやすい
- 頬がふっくらと前方に出た印象になる
- 目が開きやすくなり、目力が上がる
- 姿勢がよくなり、凛とした印象になる
▶よく噛む習慣の重要性
よく噛むことは、子どもだけでなく大人になってからも、歯並びやかみ合わせに影響を与えます。
噛むことで、顎周辺の筋肉が刺激を受け、その刺激で顎の骨が発達します。また、噛むことで唾液の分泌がよくなるため、口腔内を清潔に保ち、むし歯や歯周病を予防することにもつながります。
現代人には、「柔らかいものを好む」「よく噛まずに飲み込む」「早食いをする」など、歯や顎の成長に悪い影響を与える習慣を身に着けている方が多く見られます。
ご家庭でもできる生活習慣の改善は、まずは硬いものをよく噛んで食べるところから。ゆっくりと食事の時間を取り、20回以上を目安によく噛んでから飲み込むことが大切です。
トレーニング例
口腔筋機能療法(MFT)では、お一人お一人の生活習慣や癖に応じて、必要なトレーニングをご提案します。
舌癖の矯正、呼吸の矯正、嚥下訓練など、目的によって取り入れるトレーニングは変わってきます。
ここでは、代表的なトレーニングの具体例をご紹介します。
▶ボタンプル
唇の筋肉を強化することで、上顎前突(出っ歯)を予防・改善するトレーニングです。
トレーニング方法
STEP1
大きめのボタンに太めの糸を結び、糸が口の外に出る状態で、唇と前歯の間にボタンを挟みます。
STEP2
糸を引っ張り、唇と手でボタンを互いに引っ張るようにします。
STEP3
前方だけでなく、斜め上や斜め下など、方向を変えて繰り返します。
▶ポッピング
舌の位置を上に持ち上げるためのトレーニングです。
トレーニング方法
STEP1
「スポット」と呼ばれる、適切な位置に舌先をセットします。
STEP2
舌全体が上顎に付くように持ち上げ、口を大きく開けます。
STEP3
しっかりと舌の筋を伸ばしたら、舌で上顎をはじくように「ポン」と音を鳴らして下ろします。
▶スラープスワロー
ものを飲み込むための嚥下訓練です。
トレーニング方法
STEP1
「スポット」と呼ばれる、適切な位置に舌先をセットします。
STEP2
舌全体が上顎に付くように持ち上げ、犬歯の後ろでストローを噛みます。
STEP3
その状態を維持したまま、口の横からスプレーで水を入れて飲み込む練習をします。
▶イー・ウー
口角を上げるための表情筋のトレーニングです。
トレーニング方法
STEP1
「イー」と声に出しながら、口を真横に広げます(無音でも構いません)。
STEP2
「ウー」と声に出しながら、口をすぼめます(無音でも構いません)。
STEP3
思いっきり「イー」「ウー」を繰り返します。